マネタリーベースとマネーストックと名目GDPの話
今回は若干、専門的な話をします。
マネタリーベースとは、「日本銀行が世の中に直接的に供給するお金」のことです。具体的には、市中に出回っているお金である流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と日本銀行当座預金(日銀当座預金)の合計値です。
マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」
異次元緩和前
2013年3月 135兆円
最新
2018年4月 492兆円 3.64倍
マネーストックとは、金融機関から経済全体に供給されている通貨の総量、一般企業・個人・地方公共団体・地方公営企業など、金融機関や中央政府を除く経済主体が保有する通貨量の残高です。
銀行など金融機関は結構なペースで貸し出し増やしたので、マネーストックも普通に増えています。
異次元緩和前
2013年3月 M2 844兆円 M3 1152兆円
最新
2018年4月 M2 1003兆円 1.19倍 M3 1331兆円 1.16倍
名目GDP
2013年 503兆円
最新
2018年4月 556兆円 1.11倍
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(解説と意見)
まず、日銀が民間から国債などの資産を買い上げ、その対価として、マネタリーベースを増やします。
次に銀行がそのマネタリーベースを民間や政府に貸し出すことによってマネーストックが増えます。つまりお金が増えるという事です。
次にその増えたお金によって財やサービスの購入が行われる事で名目GDPが増えます。この名目GDPが増える事が景気が良くなるという事です。
まず目につくのが、マネタリーベースの増加率の大きさにもかかわらず、マネーストックの増加率が少ないという事です。これは多くの経済の識者が指摘している事です。民間や政府がもっと借り入れを増やしてマネーストックを増やさせる事が景気を良くするには必要であるということが分かります。つまりもっともっと政府が財政出動が必要だという事です。
それからもう一つ目につくのが、そもそものマネーストックが既に相当多いという事です。つまり一般企業や家計は結構お金持ちなのです。それにもかかわらず、財やサービスの購入額である名目GDPの増加に繋がっていないのである。一般企業や家計にはお金があるにもかかわらず投資や消費にあまり遣わないという現状があります。これをどう解釈したらいいでしょうか?
私もその点は明確な回答が出来ません。
資産の格差が大きくて、金持ちはお金を溜め込むが、貧困層が消費を増やせるほどのお金を持っていないからでしょうか?それも一部はあるかと思います。しかし日本はアメリカや中国ほどの格差がない事は明らかです。
それから日本はここ30年というもの慢性的なデフレが続いてしまったため、現金預金で保有している事が安全であるという事が染み付いてしまった事も考えられます。
いずれにしてももっともっと大規模な財政出動が求められます。