変動相場制における為替レートの決定理論(EUの通貨統合が行き詰まった理由)
変動相場制における為替レートの決定理論を説明します。
生産性の高い国は他国に対して輸出が増え、輸入が減ります。すると他国の通貨を自国の通貨に交換しなければならない量が増えますので自動的に為替レートが高くなる、日本でいえば円高になります。逆に生産性の低い国は、他国からの輸入が増え、輸出が減ります。すると自国の通貨を他国の通貨に交換しなければならない量が増えますので自動的に為替レートが安くなる、日本でいえば円安になります。
こうやって生産性の高い国も低い国も、自由貿易という神の手に導かれて共存共栄が出来る。これが為替のハンディキャップ機能です。
ただし現代の経済は財やサービスの取引だけでなく、金融取引(マネーゲーム)の割合の方が大きくなっていますので、それも説明しなければなりません。
例えば、ものすごく金融緩和を行なっていてそれでいて資金需要があまりない国、今の日本のような国があったとします。そんな国はものすごく金利が安いです。逆に、むしろ金融引締めを行っていて資金需要の旺盛な国、発展途上国のような国です。そんな国は金利が高いです。
前者の金利の安い国で資金を調達して、後者の金利の高い国で資金を運用するような金融取引が活発になります。国同士に金利差があるとこのような取引が活発になります。そうなると前者の国の通貨を後者の国の通貨に交換する量が増えますので、前者の国の為替レートは安くなって、後者の国の為替レートは高くなります。
基本的にこのようにして為替レートは決定します。
これをかんがえれば、EUの通貨統合はあまりにも無謀な政策であった事がわかります。別々の通貨で変動相場制ならば、ドイツのような生産性の高い国の為替レートが自動的に上がって、ギリシャのような生産性の低い国の為替レートが自動的に下がります。それによって両者が共存共栄できる関係になります。
しかしEUは生産性の高い国も低い国も同一の通貨にしてしまったのです。これでは為替によるハンディキャップ機能が働きません。しかも金利は欧州中央銀行が決めますので両国ともに同じ条件で資金調達を行わなければならないので、金利差による調整というのも出来ないのです。これではEUの通貨統合が行き詰まるのは当然です。
これは経済学の基本的な理論です。EUの通貨統合を進めたエリート経済学者達が知らないはずはありません。それを知りながらEUの通貨統合を進めたのです。つまりEUの通貨統合を進めた経済学者達は欧州経済を混乱させるためにEUの通貨統合を進めたのだと考えています。